【完】一粒の雫がこぼれおちて。
倉橋に聞こえないよう、小さく呟いた。
だけど何かを感じた、先を歩いていた倉橋が振り返る。
「和泉くん、何か言った?」
「何も。」
やっと教室の前に着いた。
授業はとっくに始まってる。
鞄だけ置いて、中庭にでも行ってサボろうかな。
遅刻しているせいか、扉を開くのに躊躇している倉橋を押し退けて先に教室へと入る。
ガラガラガラ、という音と共に。
クラス全員の目がこっちを向いた。
「おい……あの2人……。」
「……倉橋さんって、和泉くんと付き合ってるのかな?」
「え、まさかの2人で登校?」
「しずくちゃん、やっぱり和泉くんのこと……。」