【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「なっ……!!」
言われた男、松江潤平(まつえ じゅんぺい)が顔を真っ赤にした。
当たり前と言われれば当たり前。
コイツの成績は、いつも下から2番目だと有名なのだから。
「和泉くん!!」
口を金魚みたいにパクパクとさせる松江を無視して、倉橋は少し怒ったかのように僕の服の袖を引いた。
「ちょっと、あんまり引っ張らないでくれ……。」
「こんなのって何!?」
「は?」
“引っ張らないでくれる?”
その言葉は見事掻き消され。
倉橋の意味不明な言葉に、今度は僕が素っ頓狂な声を上げた。
「……何の話?」
「さっき和泉くん言ったじゃん!」
さっき?
…………あぁ、アレか。