【完】一粒の雫がこぼれおちて。
さすがにキレてもいいかな、って思う。
1歩歩けば声を掛けられ、1歩歩いては引き止められ。
まるで車でよくある渋滞だ。
「……今度は何?」
松江を見る際、思わず睨んでしまった。
僕の冷たい視線を浴びた松江は一瞬ばかり肩を跳ねさせ、申し訳なさそうに話し出す。
「本当におまえら、付き合ってないの?」
「だからそう言ってる。」
「でも俺、昨日見たんだけど……。」
昨日?
「あのさ、主語と述語、修飾語、最低その3つだけでも入れて、簡潔に話してくれない?」
意味が伝わらないから。
「わ、悪い。昨日見たってのは、その……夜、おまえらが……。」