【完】一粒の雫がこぼれおちて。
今度こそ僕は、自分の席へと着く。
クラスのみんなが納得して、この話題を終わらせようとしている中。
松江だけがずっと、納得いかない顔で僕を見ていた。
当然本当のことを言う義理は無いから、僕は何も言わない。
再開された残り数10分の1限目の授業中は、ずっと松江の視線が痛かった。
……その視線から逃げるように見た、勉強に励む倉橋の後ろ姿。
少し前に席替えをして、倉橋は前からの2番目の席。
僕は後ろから2番目の席だから、その姿がよく見える。
1限目の古文の内容が、一体どれだけその頭に入っているのか。
きっと10分の1も入ってないんだろうけど。
それでも頑張る倉橋の後ろ姿を見ていると。
自然と松江からの視線も気にしなくなって、ほんの少し気分が良くなった。