【完】一粒の雫がこぼれおちて。
大河内さんは、私が嫌いだから。
「それじゃあね、倉橋さん。また夜。」
「……うん、またね、大河内さん。」
いつから、笑顔を作ることに抵抗を感じなくなっただろうか。
いつから、作る笑顔が自然体となっただろうか。
「……帰ろう。」
鞄を持って教室を出る。
5月の夕日が私の顔を照らし出していて。
最早それが笑顔なのか、真顔なのか、私には区別がつかない。
私にとっての笑顔は、真顔と同じだから。
私の無表情は、いつだって笑顔。
それでも。
それでも、彼。
和泉くんと一緒にいるときだけは。
『和泉くん!!』
私は、笑えていた気がするんだ……。