【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「……ありがと。」
その言葉は自然と出た。
「い、和泉くんが御礼言った……!?」
「何、僕が御礼言ったらダメなわけ? ……僕だって、御礼ぐらい言うし。」
なんて、倉橋には言ったけど。
本当は僕も驚いていた。
自分のプライドが高いことなんて、とっくの昔から理解してる。
そんな僕だからこそ、人の世話になるのは好まないし。
御礼なんてめったに言いたくない。
「……何となく、気に入ったんだよ。」
そう、それだけ。
僕の好みに合ってたから、今回は自然と御礼が口から出ただけ。
コイツから貰ったものだから、嬉しいだなんて……。
そんなことは一切思ってない。