【完】一粒の雫がこぼれおちて。
――4丁目。
私の家があって、大ちゃんの家もある。
私にとって一番恐ろしい場所。
「はぐぁっ……ぅ、っ……。」
お腹に感じた酷い圧迫感に、体が前折りになった。
喉を競り上がって来た胃液が、口から零れる。
「しずく。お前は一体誰のだ?」
「だ、ちゃ……の……。」
「そうだよなあ?」
苦しむ私を見て、微笑むのは大ちゃん。
潤平くんとは似ても似つかない、松江家の長男坊。
「しずくはずっと、オレのもんだよなあ?」
「う、ん、……大ちゃんの、だよ……?」
機嫌を取ろうと思っても、4丁目、大ちゃんの家に呼ばれたときは殆どが無駄になる。
あの日から、この家で大ちゃんが私を甘やかしてくれたことなんて無い。