【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「しずくがいない世界なんて、オレは生きられないからな。」
大ちゃんは残酷な人。
誰よりも、怖い人。
……だけど。
「……もし、生まれ変われるならば、そのときは……。」
何かを言う、大ちゃんの声は少し震えてる気がして。
何だか大ちゃんが、泣いている気がして。
目は見えないし、音も少ししか聞こえないんだけど、そんな気がして。
「そのときは……しずくと、××じゃない人生がいい。」
力の入らない腕を無理矢理動かして、大ちゃんの頬に触れた。
あんなに怖い大ちゃんだけど、人肌は、体温は私たちと同じだった。
「っ……愛してる、しずく。」
いつも聞かされる、お決まりの言葉だけは口の動きで分かった。
……ほらね、和泉くん。
暴力は、大ちゃんの愛情なんだよ。
この場にいない和泉くんにそんなことを思いながら。
私の意識はとうとう、プツンと切れた。