クロス

 「見ないで下さい、主様」

 転がる私の前で、あなた様は笑う。


 「なぜ」

 「私はみにくうございます」

 「そうか」

 それがどうしたとあなた様の声が上から降ってくる。

 もう、ずいぶん聞き慣れた優しい慰めです。

 あなた様の優しい嘘に、私は溺れそうになるのです。

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