全力疾走でかけぬけるヤツの42.195km
スタート
「違います」
夏の早朝である今の空気が、いっきに冷めた。
「当店のメニューに
“スマイル“などはございません」
そういって、店員は店前を箒ではいた。
箒がコンクリートにかすれる音は、
“はやく帰れ“と催促しているようにも聞こえる。
「そんな冷たくしないでくださいよ~」
しかし店員は箒をはく手をとめようともしない。
俺は真剣なのに。
「無視しないでくださいよ。
俺ちゃんと覚えてるんすよ。
あなたが俺の面接官だったの」
店員はギロッと翔(かける)をにらんだ。
やっと得たリアクションだったが、
やっぱ睨まれるのは、いやだった。
「だったらなんだっていうんですか」
一行に態度を変えようとしない。
俺がこんなに熱心に訴えてるのに。
この人には心がないのか!?
心がない…?
まさかアンドロイド!?
「違います」
え!?人の心読めちゃうわけ!?