愛しい君へ贈る詩




「とまぁ、そんなことがあったわけ」

「それで、そいつらはどうなったんだよ?」

「んー…首謀者の女たちも結衣ちゃんを襲った男も学校に居づらくなって転校していった。でも、そんなの何の問題の解決にもならない。俺たち家族に、消える事のないシコリを残された。愛美さん…あ、結衣ちゃんのお母さんね。あの日以来、結衣ちゃんの帰りがちょっとでも遅くなるとパニックを起こすようになったし、結衣ちゃんは人と関わることが苦手になった。今でこそ、多少は関われるようになってきてはいるけど、恐怖心を抑えるために、ウォークマンが手放せなくなった」

「恐怖心を抑える?」

「そう。逆に外の音が聞こえなくなって危ないんじゃないかって言ったんだけど、何も聞こえないシャットダウンした状況が安心できるんだって…」

「……」







3年近く経った今も深く傷が残る話に、恭輔は何と言っていいのかわからなかった。








「全ては俺が女の子に対しての関わり方がいけなかったせいで招いた事件だったから、俺は結衣ちゃんを守るために自分を変えようと思ったんだ。それが今の俺ってわけ」

「………」

「あの一件があって、俺と結衣ちゃんの関係に目が向かないように、女の子に平等に接すること、学校では結衣ちゃんには極力関わらないこと、女の子に俺たちが家族(いとこ)であることは話さないってことを決めたんだ。だから、地元から少し離れているこの高校を選んだ。まぁ、俺の母親からはこのチャラチャラした性格は嫌だって散々言われてるけど、それでも結衣ちゃんを守るためにはいくらだって自分を演じられる」

「何でそこまでして…」

「いとこだからっていうのもあるけれど、俺らの母親が双子でさ。家もちょっと特殊な構造してて、パッと見は普通の家と変わらないんだけど、中で行き来できるような設計になってるんだ。しかも、偶然にも俺たちの誕生日が同じ日で、本当に生まれた時から一緒にいるから妹みたいな存在なんだ」

「…まさかいとこだったとはな…」







あれ程知りたいと思っていた蓮と結衣の関係性に、恭輔は驚いていた。
そして、知らなかったこととは言え、まさか血縁者にヤキモチを妬いてたとは、もう自分に苦笑いするしかなかった。




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