男装ホスト★
そして、別の席に移った私は思わず顔をしかめそうになった。あの後ろ姿はきっと。
…ダメダメ。お客様を選んじゃ。
どの人にも同じ最高のサービスをするのがプロのホストで、No.3を維持するための秘訣。そして私の数少ないプライド。
私は心のなかでヨシッ!と気合いをいれると、そのお客さんの隣に滑り込むようにしてソファに座った。
「さゆりちゃん!来てたんだね~」
持ち味の明るいキャラと笑顔で話しかける。その女性は私が席につくなり、遅い!と怒鳴った。
あちゃーー、今日はご機嫌ななめ…。
既にサポートに入っていたホストがべろべろに酔わされている。いったい何杯飲まされたんだか…。心配だ。
でも、人のことより自分のことを心配しなきゃいけないお客さん。構ってる余裕はない。
「ごめんごめん!でもこうしてさゆりちゃんのところに来たでしょ?許して」
「もーしょうがないんだからぁ」