光の少女Ⅲ【合成獣編】
「俺は、こう見えても上級クラスの魔族だ。その俺が本気で殺すつもりで、攻撃したのに、お前等が怪我で済んだのも、不意をつかれたとはいえ、一撃で昏倒させられたのも、全部もう一人の俺のせいだ」

「・・・どういうことだ?」


[風夜]の言葉に、空夜が問い返す一方、花音は彼が暴走して、自分達を攻撃した時を思い出す。


(そういえば、あの時、誰かに邪魔するなみたいなこと言ってたっけ)


「どういうことも何も、あの時も今と同じように表裏が入れ換わっていただけで、あいつの意識は俺の中にあったんだよ。あいつが中から邪魔をして、俺の力を半減させ、軌道も逸らせたから、お前等に直撃はしなかった。そのうえ、抵抗して感覚を鈍らせてきたせいで、闘神であるお前等の接近にも気付かなかったって訳だ」

「だが、お前が目覚めるまでは、普通の人間だったんだろう。そこまで抵抗出来るとは思えないが」

「それが、あいつの姉が仕込んだ術のもう一つの効果だ」

「!!姉さんの・・・!?」


[風夜]はそう返して、言った封魔ではなく、沙羅を見た。


「成る程、沙羅さんのお姉さんは保険をかけていたのね。・・・もし、魔族としての人格が出てしまった時、あまり好き勝手出来ないように」


そう神麗が感心したように言った時、男の狂ったような声が聞こえてきた。

それと同時に、[風夜]が顔をしかめる。


「・・・ちっ、わかってる。文句なら、色々と聞いてきたこいつらに言えよ。・・・ああ、ちゃんと約束は守ってやる」


〈中〉にいる風夜との会話だったのか、そう言うと、[風夜]は背中に一対の翼を出した。
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