光の少女Ⅲ【合成獣編】
「す、凄い・・・」
見ていた花音が思わず呟くと、沙羅が横でクスリと笑った。
「ふふ。この数日で、彼の潜在能力を引き出し、上級魔族相手でも戦えるくらいには鍛えてあげたからね」
「この数日であそこまで持っていくなんて、どんな特訓だったのか気になるわ」
そんな沙羅と神麗の言葉が聞こえたのか、それすら気にいらないというように〈風夜〉が表情を苛立たせるのがわかる。
「気にくわねぇんだよ!人の分際で俺を支配下に置こうとしやがって!お前は、俺の支配下に入って、俺に身体を貸していればいいんだよ!」
言いつつ片足を振り上げ、横顔を蹴り飛ばそうとする。しかし、それも風夜の空いていた方の手で止められた。
「・・・そういうわけにはいかないんだよ。お前は、誰かを傷付ける為にしか力を使わない。・・・それじゃあ、駄目なんだ」
静かに返しながら風夜は受け止めていた足を放る。それでバランスを崩した〈風夜〉は体勢を整えると、フッと笑みを浮かべた。
「だが、わかってるのか?俺を取り込むということは、お前が人ではなくなるってことだ。もう戻れないぞ。それでもいいのかよ?」
「・・・それは沙羅から聞いた。その話を聞いた上で、俺は決めたんだ。王族の地位だって、必要ない。・・・今まで俺が築いてきたものがすべて壊れたとしても、俺はこの選択を後悔しない!」
「・・・そうかよ」
そう呟いた〈風夜〉が目を瞑る。
それと同時に彼の背に大きな翼が生え、魔力が放出されるのがわかった。
「だが、俺だってやっと自由を得たんだ。ずっといた暗い闇の中から、漸く出られたのに、存在を消される訳にはいかないんだよ!」
「っ!!」
何処か悲痛な声で叫んだ〈風夜〉が魔力の渦を放ち、風夜が対抗するように放った風の渦とぶつかりあった。