光の少女Ⅲ【合成獣編】
「ふっ、我々に利用されていることにも気付かないとはな」
「まあ、いいじゃない。どんどん改良して、強くなってもらえば、私達は何もしなくても、闘神達を倒してくれるかもしれないし」
馬鹿にしたような男の声の後、愉しそうな女の声がする。
「ああ。奴等がいなくなれば、一気に我等の計画を進められる。《あの方》を迎える準備ができる」
「ふふ、そうね」
「でもさ、窮姫。このまま、あの男を強くしていったら、他の奴等は必要ないんじゃない?」
「いえ、まだ利用価値はあるわ」
「そうだな。存分に利用させてもらおうじゃないか。・・・最後までな」
「ふふ、そう。実験の最後に、ね」
「!!」
その言葉に火焔は息をのむ。
「!誰だ?」
気配がもれてしまったのか、中から声がする。
今見付かってはいけない気がして、火焔は再び気配を消すと、素早くその場を離れた。
(これを渡す訳にはいかないよな)
部屋に戻ってきてから、窮姫に渡さなかった紙の束を見る。
そのまま、手の方に意識を集中させると、紙の束は一瞬の内に燃えて消えた。
その滓を手から払い、火焔は部屋の中にあったものを纏め始める。
暫くして、部屋の中を片付けると、最小限の荷物を持って、火焔は部屋を出た。
もう、ここへ戻ってくるつもりはなかった。