すずにひも
1・出会い
僕、網田カイト一枚の上着をあまよけにして寒さに凍えて、
路をゆく人をただ見つめながらズボンもびしょぬれになっても雨がたまったアスファルトの地面に座っていた。
皆僕を変な目で見る…
当たり前だ
僕は浮浪者だ。
しかも十六歳で普通なら学校に通っている年ごろだ…
だけど僕には行くあてがなくてとても孤独だった…
(おなかすいたな…とても寒い…このまま死んじゃうのかな…)
はぁ・・・っと溜息を吐く。
その息がもったいなくあってついでに手も温めてみる。
それでも寒い…
もっと…もっと溜息みたいな息を吐き手を温め続けた。
寒さを感じるのは体だけじゃない
孤独だ・・・
寂しい・・・
そう思っていた
その時、ただ見つめていただけの視界を遮られた。
逆に不思議そうに此方を見つめてくる。
「君どうしたの?こんなところにうずくまって寒いでしょう?」
と優しく声をかけてくれた。
心配してくれている…
腰をかがめて、僕を自分の傘に入れてくれた。
肩までの短い癖っ毛の髪が傾げた時に
さらりと斜めに流れた。
幼さが少し残る綺麗なお姉さんだ。
声と同じ優しい表情。
「良かったら、私の家においで・・・ね?」
でも少し困ったような、迷子の子供を慰めるように優しく微笑んでそういってくれた。
「…っつ」
その言葉と声の温かさで僕の頬から涙が伝って、言葉に詰まる。
急に心が温められたせいか、涙が止まらなかった…
冷たかった心が溶かされて体から出た感じの涙…
「変なことしないからね、あんしんしてねって
泣かないの!
私が泣かせたみたいじゃない~~」
彼女は今度は本当に困惑し驚き、冗談を言いながら僕を慰めてくれる。
それが
うれしくって・・・って
言葉に出したかったけれど、声に出ないほどうれしかった…
「さ、行きましょう」
と
手を差し伸べられた…
その手は柔らかくて温かかった…
全てにおいて僕は
この人
すずさんに温められた…
そして半年後…