翠月姫


「目覚めた?」


再び部屋に入ってくると 少女は目を覚ましていた


「ドチラサマデスカ?」


疑い深く俺を睨む少女
俺は両手を挙げて 訳を説明する


「俺は湊夜、君は?」


少女はまだ信用していないようで
名を名乗ってはくれなかった


「じゃあ何かあったら言ってね」


ひとまず どうにか言いくるめると
少女をもう一休みさせる事に。


俺は再び部屋を出る
一階に降りると そこには幹部が揃っていた


「湊夜、何してたんだ?」


不思議そうに俺を見つめる嶺太
俺は“何でもねーよ”と言ってソファーに座る


「それより何で俺らが行く前にあんな事になってたの?」


話を切り出した戒斗に続いて
悠も琉斗も嶺太も 次々に疑問を口にし出した



「あそこを潰すには俺らと同じ、もしくは俺らより強い…つまりデカい族じゃないと出来ないだろ」


「あぁ。でもそんな族の形跡は何一つ無かった」


そう “翠月姫”でない限り
一人で族を潰すなんて 不可能だ

だが 今は
翠月姫の事は話さない方がいい気がした


「とにかく族は潰れてたんだし、いいだろ?」


「…まぁ、そうだな。とりあえずはそれでいい」


琉斗のサポートのお陰で
ひとまず この話を終わる事が出来た


しばらく次の暴走の会議をしていると
ドアが開く音がした


「あの…もう、平気なので、帰ります、!」


さっきより顔色も良くなっているし
俺は少し安心した

“こっち座って”とソファーに手招きすると
少女は大人しく そこに腰掛けた


「君は今、危険なんだ」


分かっているであろうが 俺は1つ1つ
丁寧に説明した

そして 覚悟を伝えた


「俺は 君を護りたいと思う」


一瞬 彼女の目が揺らいだ
そして少しの沈黙の後 首を横に振った


「駄目です、そんなの…!!」


そう言われるが 俺も引き下がらない
真っ直ぐに目を見つめる

もう一度 ハッキリ伝えると
…彼女は 涙を流した


「ごめん!!…そんなに嫌だったか?」


慌てて顔色を窺う
すると彼女は 再び首を横に振った


「ただ…嬉しくて…ッ」


その言葉を聞いた時 俺は

“俺はこの子を護らなきゃいけないんだ”と
強く決心した

彼女の涙を 拭ってあげたい
…俺は 惚れたんだ、この女に


「俺は、君を護りたいんだ」


優しく頭を撫でる
すると一部始終を見ていた嶺太が 言った


「…なんだかよく分かんねぇけど、湊夜が護りたいっていう女ならきっといい子だしな!」


「そうだな、女1人護れないなんて情けないし」


「俺も、賛成だ」


全員の意見が一致すると 嶺太が手を差し出した

「よろしくな」

彼女は手をおずおずと握る
俺は誰にも聞こえないような小さな声で 呟いた




「俺が…深紗を護る」




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