oneself 前編
「俺も昔は、かなりかわいがってもらったし」


あたしは無言で、哲平の話を聞いていた。


「それにな、店が落ち着く一ケ月だけでいいて言われてるねん」


一ケ月。


長いのか、短いのか。


情に厚い哲平の性格を知ってる。


そして、今日この場所を待ち合わせにした理由が、哲平の言葉で明らかになる。


「今からな、先輩来るねんか。未来も一緒に来て」


「え、何で?あたしが行ってどうなるん…」


哲平は今までで一番真剣な顔で、あたしを見つめた。


「そんな仕事するとか、正直不安やろ?だから少しでも、不安がなくなるように」


不安がなくなる?


「勝手なんは分かってるけど、未来には応援して欲しいからさ」


応援して欲しい?


頭の中を、哲平の言葉がグルグルと回る。


あたしの気持ちがどうであれ、哲平はそれに向かって、もう進んでるんだ。


そういう事でしょ?


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