oneself 前編
それから間もなくして、哲平の電話が再び鳴った。


「あ、はい。表に出ます」


そう言うと同時に、席を立った哲平に続き、あたしも立ち上がる。


あたし達は無言のまま、会計を済ませ、表に出た。


「先輩」


そこにはスーツ姿の、でも明らかに普通の会社員とは違う、派手な男の人が立っていた。


哲平と軽く話した後、あたしの方を向いた彼。


「はじめまして、コウキです」


屈託のない笑顔と、落ち着いた感じの優しい声。


「あ、未来です」


「せっかくの休みやのにごめんな」


「いえ」


「ほな行こか」


重い気分のあたしとは裏腹に、二人は軽快な足取りで進みだす。


行きたくない。


…なんて言えるはずもなくて。


あたしは前を歩く二人の背中を見つめながら、その後をついて行った。


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