oneself 前編
そんな事を考えながら、5分ほど経った頃だった。


「未来ちゃーん」


振り返った先には哲平の姿はなく、先輩一人がこちらに向かって歩いて来る。


あたしは携帯を鞄の中にしまって立ち上がった。


「ごめんな、もうちょっとかかるし、未来ちゃん暇やと思って」


駆け寄ってきた先輩が、申し訳なさそうな顔で謝った。


「あ、大丈夫です」


「ホンマに?仕事の事とか納得してる?」


先輩があたしの顔を覗き込んだ。


「えっ…」


真っすぐにあたしの目を見てくる先輩の表情は真剣で、あたしの心の中の不安を見透しているようだった。


そんなあたしを分かってか、先輩は柔らかい笑顔で笑って、「ついて来て」と言って歩き出した。


あたしは言われるがまま、先輩の後ろ姿を追いかける。


「俺腹減ってるねん、飯食っていい?」


「あ、はい」


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