oneself 前編
「だから俺は、あいつをホストに誘った。もちろん店が困ってるんもあるし、助けて欲しい気持ちもある。ただあいつがそれなりに充実した生活を送ってるなら、壊してまで誘ったりはしいひん。お前が変わりたいって思ってるなら、一度考えてくれって」


「でも…」


だからってホストをするなんて。


先輩を目の前にしては言えないけど、良いイメージなんてない。


「仕事を辞めたら金に困るやろ?次の仕事が決まるまででもいい。今の仕事以上の給料は保障する。哲平なら売れるホストになれる」


哲平なら…


売れるホストになれるよね。


それはあたしも思うよ。


でも…


「未来ちゃん、ここからはきつい事言うかもやけど」


急に真剣な顔つきになった先輩が、あたしを見つめる。


ゴクッ…


唾を飲み込む音が、やけに耳についた。


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