oneself 前編
「あいつは多少なりとも、ホストの仕事に興味を持ってる」


それはあたしも、薄々感じていた事。


いくら頼まれたからって、昨日の今日で面接に行くくらい、哲平は真剣に考えて、動き出してて。


「それでもあいつは、未来ちゃんの事があるから、最後の最後まで悩んでたで?」


哲平もあたしが素直に応援出来ない事くらい、分かってるはずで。


哲平はあたしの事を何も考えないで、そんな事を決める人じゃない。


「昨日一晩中、哲平は未来ちゃんからの連絡を待ってた。未来ちゃんに相談したいって。未来ちゃんが嫌ならしたくないって」


昨日に急に会いたいと言った哲平。


何度も何度も連絡をくれていた哲平。


「正直あいつは、未来ちゃんが浮気してるんかもって、ホンマに泣きそうになっとった」


哲平が悩んでいた頃に、何も知らなかったあたし。


挙句の果てに連絡がつかなくなったあたし。


何で疑うの?


何で信じてくれないの?


そう思う事は簡単だけど。


好きなら不安になる気持ちも、悪い方へ悪い方へ考えてしまう気持ちも、あたしは良く知ってる。


それをいつだって吹き飛ばしてくれたのは、哲平だったのに。


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