oneself 前編
電話を切ってから、1時間半ほどして、哲平の家に到着した。


「着いたよ」


そうメールを送信し、哲平を待つ。


間もなくして、玄関の扉がガチャリと開き、首からタオルをぶら下げた、スウェット姿の哲平が現れた。


「お疲れ」


「おう。まぁ入って」


濡れた髪から香る、ふんわりとしたシャンプーの匂い。


それと同時に鼻についた、アルコールの匂い。


本当にホストの仕事をしてるんだという事が、やけにリアルに感じた。


少し疲れた顔の哲平に連れられ、部屋へと入る。


以前に来た時と、家具の配置も何も変わってない部屋。


ただ一つだけ違うのは、窓際に掛けられた、黒色のスーツ。


あれを着て、仕事してるんだ。


きっと哲平の事だから、すごく似合うんだろうな。


でもあたしは、学ランやサッカーのユニフォーム姿の哲平の方が好きだよ。


「てか、今日ホンマごめんな」


スーツをボーっと眺めていたあたしは、哲平の声でハッとする。


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