oneself 前編
「哲平いつもと違うな」


漫画喫茶の時から感じていた思い。


あたしとの関係を、誰かにバレたくないような…


冷静に考えれば、すぐに分かる事だけど。


どこかで、あたしは特別だって気持ちがあった。


そんなあたしの希望は、哲平の言葉で、現実に引き戻された。


「ごめん、客に見つかったりしたらまずいねん」


水商売の世界なんて知らない。


ホストの世界だって知らない。


でも、何となくは分かる。


哲平にあたしという存在がいる事は、あんまり公にしちゃいけないって事。


でもどこかで、哲平はそこまでしなくてもいいと思ってた。


たった1か月だけでしょう?


指名をガンガン取ろうなんて思ってないでしょう?


でもやっぱり…


あたしは哲平の彼女であることは、周りに知られちゃいけないんだ。


何だか、ひどく悲しかった。


< 164 / 245 >

この作品をシェア

pagetop