oneself 前編
テレビで見た事がある、ホストのドキュメンタリー番組。


哲平がしているのは、まさにその仕事。


「例えばさ、お客さんに、彼女おるんって聞かれたら、何て答えるん?」


答えは分かってる。


でも、もしかしてなんて…


「おらんて言わなあかんねん。ごめんな」


ないよね、やっぱり。


そう低い声で答えた哲平は、あたしの顔を、心配そうに覗き込む。


「そらそうやんな。ごめんな、変な事聞いて」


あたしは笑顔を作って、笑ってみせた。


そんなあたしを見て、哲平も少しだけ安心したような笑顔を見せた。


「未来」


そう言って哲平は、あたしを引き寄せて、強く抱き締める。


哲平の乾いた唇が、あたしの上に重なった。


「未来」


何度もあたしを愛おしそうに呼ぶ声に包まれながら、あたしは哲平に抱かれた。


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