oneself 前編
部屋着からこの前買った洋服に着替え、準備万端のあたしは、哲平からの連絡を待っていた。


ちょうど1時間が経った頃、マナーモードを解除した携帯が、陽気な音楽を奏でる。


「は〜い」


「今もう家出たし。未来、梅田まで出て来れる?」


後ろで聞こえる、車のクラクション。


さっきより少し元気になった哲平の声を聞いて、安心した。


「うん、大丈夫やで」


「今日な、京都行こうと思ってんねん。JRの中央改札のとこで待ってるわ」


「えっ、京都?」


いきなりでびっくりするあたしに、哲平は笑って言った。


「うん、京都。気付けて来いよ!」


電話を切り、急いでジャケットを羽織る。


今日の夜はどうするんだろう?


泊まりになるのかな?


この前の件から、両親とは気まずいままだった。


でも無断外泊は出来ないし、そうなら言っていかないと。


折り返し哲平に尋ねようと電話をかけると、「電波の届かない場所に…」のアナウンス。


もう地下鉄に乗っちゃったんだ。


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