oneself 前編
すっかりご機嫌になったあたしは、この前会った高校時代のバスケ部の友達の話をしながら、京都までの30分ほどを過ごした。


哲平も久々に聞く名前に、楽しんで聞いてくれていた。


京都駅に着き、辺りをキョロキョロと見回しながら歩くあたしに、哲平はそっと手を差し出した。


漫画みたいな表現だけど、胸がキュンとするっていうのは、こういう事を言うんだと思う。


あたしはその手をギュっと握りしめ、哲平と肩を並べて歩いた。


改札を出て、バス乗り場に向かって歩く哲平。


「あ、あのバスや!未来、走れ!」


哲平に手を引かれ、間一髪でそのバスに乗る事が出来た。


「間に合った〜。めっちゃ本数少ないねんて。この次は1時間後とかやで」


「え〜!」


二人で息を切らしながら笑い合っていると、あたしの耳に流れ込んでくる車内アナウンス。


京都は詳しくないけれど、聞いた事のある名前だった。


高校時代、「いつか行こう」と、哲平と約束した事のある場所。


あたしは目を見開いて、哲平の顔を見つめた。


そんなあたしと目があった哲平は、照れたような顔で言った。


「最近、未来に不安な思いさせてるから」


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