oneself 前編
どこか不穏な空気に耐えられず、先に言葉を発したのは、あたしの方だった。


「哲平?」


もう一度呼んだあたしに、哲平はゆっくりと視線を合わし、少しだけ唇を噛みながら、ようやく重たい口を開いた。


「あんな…」


「ん?」


何か言いたげな顔で、あたしを見つめる哲平。


それでもすぐに言葉が出てこないのは、よほど言いにくい事だからだろうか。


またしても流れる重い沈黙に、何ともいえない不安が広がっていく。


「疲れてるん?眠たいん?そっか、寝てないもんな」


不安をき消す為に、笑顔を作って必死に話す。


「でも、もう後一週間で仕事も終わりやな」


「ごめん!」


あたしを遮るかのように、哲平は少し大きな声でそう言った。


「えっ…」


何?


何に謝ってるの?


「悪いけど、仕事まだ辞められへん」


そう言って、哲平はあたしを見つめた。


真っ直ぐな目で。


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