oneself 前編
すっと立ち上がる哲平の気配。


あたしはうつむいたまま、待っていた。


あたしの期待に、哲平が応えてくれる事を。


そう、信じてたのに…


その時、視界に入ってきた、真っ白なタオル。


軽く顔を上げると、困ったような顔で、あたしに差し出す哲平の姿。


あたしはそれを乱暴に奪い取り、顔を覆った。


信じてたのに…


もう何を言っても、何をしても無駄なの?


哲平の意思は、変わらないの?


あたしはタオルを顔に当てたまま、今度は静かに泣いた。


声を上げることにさえ、もう疲れた。


悲しくて。


虚しくて。


やりきれないよ…


未だにあたしを抱きしめてくれない哲平は、隣で何を思ってるんだろう?


あたしが泣いてても、胸が痛くないのかな。


あたしの事は、もう好きじゃないのかな。


それでも馬鹿なあたしは、哲平の気持ちが変わったりするんじゃないかって、どこかで期待してるんだ。


今、この瞬間も…


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