oneself 前編
「俺は今、仕事にやりがいを感じてる」


やりがい。


すごく素敵な言葉。


でもどうしてもホストの仕事だという事が、あたしには引っかかる。


「誤解はせんといてな、女と喋るのが楽しいとかじゃないで」


あたしの不安を見抜くように、哲平は小さく首を横に振りながらそう言った。


「先輩もそうやけど、オーナーとかNO1の聖夜さんとか、男から見てもホンマにかっこいいねん」


興奮気味に声を荒げる哲平。


哲平だって高校の頃、男から見てもかっこいい男だった。


外見だけじゃない。


周りを気遣える優しさとか、面倒見の良さとか。


そんな内面だって、まわりの子達は認めてたと思う。


「俺もそんな風になりたい」


もう十分じゃない…


そう心の中で呟いた。


「上手く言えへんけど、今の仕事を始めてから、あの頃よりも前向きになれた。自信ない男なんて、未来も嫌やろ?未来にイイ男やと思ってもらえるように、俺は変わりたかった。だから…」


そこで哲平は、大きく息を吸い込んだ。


「もうちょっと頑張りたい」


< 209 / 245 >

この作品をシェア

pagetop