oneself 前編
「嫌…」


かすれて、声にならないような声だった。


あたしは懇願するように、哲平を見つめた。


何も言わずに、頭をもたげる哲平。


それが…


哲平の答えなの?


その時、あたしの中で、何かが切れた。


「嫌!外で会うとか絶対に嫌や!」


あたしは大声で怒鳴った。


「何で?何でそんなんする必要があるん?」


お店で接客するだけで、十分じゃないの?。


「哲平はあたしよりも仕事が大事なん?」


あたしの気持ちなんか、どうでもいいの?


「勝手すぎるわ!」


今まで我慢していた思いが爆発するように、次々に口を切った。


それでも哲平は何も言わずに、ただあたしを、真っ直ぐに見つめていた。


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