oneself 前編
「あたしも哲平が好きやで。だから…」


「でもな!」


あたしの次の言葉を予測しているかのように、哲平はあたしの言葉を遮った。


「俺も自分で最低やって分かってる。仕事を理解出来ひんのも分かってる。でも未来の為に、仕事を辞める事も出来ひん」


そう言って哲平は、頭を抱えた。


哲平はあたしの不安を分からないほど馬鹿じゃない。


そんな自分勝手な考え方をする人でもない。


あたしと仕事の間で板挟みになっている哲平も、苦しかったんだと思った。


「哲平…」


気付けばあたしは、哲平の体を強く抱き締めていた。


「別れたくないよ…」


そう言いながら。


哲平は突き放すでもなく、抱き返すでもなく、あたしの胸の中で、小さく肩を震わせていた。


哲平が悪いだとか、あたしが悪いだとか、もうどうだってイイ気がした。


ただあたし達は、愛し合ってるんだ。


昔とは違う状況の中で…


「別れへんから…」


もう一度そう強く言いながら、あたしは哲平の背中の部分のTシャツを握りしめた。


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