oneself 前編
「ホンマにそれでイイの…?」


少しだけ顔を上げた哲平が、申し訳なさそうにあたしに尋ねる。


「哲平はあたしと別れたい?」


その瞬間、あたしは今までにない強さで、哲平に抱き締められた。


「そんな訳ないやろ…」


あたしを抱き締める力強さと、その言葉。


もうそれだけで、十分だった。


知らないうちに溢れ出ていた涙を拭う事なく、あたしは哲平の頭を両手で引き寄せた。


重なる唇。


優しい口づけが、だんだんと激しくなっていく。


ゆっくりとあたしを押し倒す哲平。


もう何だってイイ。


この瞬間が全てなんだ。


唇から。


素肌から。


哲平の愛情を全身に受けられるのは、あたしだけなんだから…





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