oneself 前編
でもひとつだけ、嬉しい事もあった。


日曜しか会えなかった事を、哲平が気遣ってくれて。


中日の水曜はさほど忙しくないらしく、お店の人に掛け合って、1部のみで上がれるようになった。


水曜、実際には木曜の午前1時過ぎから、あたしは哲平と会えるようになった。


両親には、毎週木曜提出の課題があるので、奈美の家に泊まると嘘をついて。


ミナミの漫画喫茶で時間を潰し、哲平の仕事が終われば、ホテルへと向かう。


あたしは勿論、次の日は学校で。


哲平も日頃の睡眠不足からか、早々に眠りにつく。


何をする訳でもないけれど、一緒に過ごしている時間だけは、哲平の愛情を信じられた



水曜と日曜は、あたしだけの哲平なんだ。


そんなあたしは、自分の事に必死で、周りの事を考える余裕なんて、全くと言っていいほどなくて。


もし、友達に悩みを打ち明けていたら…


友達の悩みを聞く事が出来ていたら…


あたしの未来も、もう少し違っていたかも知れない。


今日からまた、1週間が始まる。


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