oneself 前編
カードの使用額は、そんなにあれから増えてはいない。


ただその支払いが来月にはある事。


携帯代も払わなければならない事。


手持ちの現金はほとんどない事。


本当はもっと真剣に考えなければいけないのに、あたしは未だのんきなままだった。


う~んと首をひねるあたしを見て、香は何かを感じ取ったのか、ゆっくりと自分の事を話し出した。


それはあたしととても良く似ていて…


彼に彼女がいると分かってからも、気持ちを押さえられずに、関係を続けていた香。


彼女に負けたくない思いから、綺麗になる為にかなりのお金を使ったという。


それどころか、食事代やホテル代は、香が出していた。


「めっちゃ都合イイ女やろ?」


そう言って苦笑する香は、何だか痛々しかった。


彼と過ごす時間が減るのが嫌で、あの頃決まったバイト先も、結局断ったらしい。


当然あたしよりも前からカードを持っていた香は、その支払いが出来ずに、両親に助けてもらった。


「カード取り上げられたしな」


またしても苦笑する香は、さっきよりも少しおどけてそう言った。


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