oneself 前編
香は高校時代から、惚れやすい性格だった。


その上、あまり男運が良いとは言えない。


1年の頃に付き合った先輩には、二股されていた挙げ句、相手の方が本命だった。


香は帰宅部だったので、この頃からバイトを始めていた。


天王寺にあるファミリーレストランで出会ったその人は、ずいぶんと年上の男性で、付き合ってしばらく経った頃に、バツ1の子持ちだと判明した。


それが原因で、バイトも辞めたんだよね。


3年の頃に付き合った他校の彼氏は、彼氏の浮気が原因で破局。


香は基本、カッコイイ人しか無理だと豪語している。


中身を知らないうちから付き合うから、そんな事になると、幸子は毎回呆れていたっけ。


別れるたびに大泣きするくせに、ある意味打たれ強いなとあたしは思う。


まぁでも今の彼とはきっぱり別れて、今のバイト先の彼がまともな人だと、1番良いのだけれど。


「あの人とあんまり会えんようになって、ちょっと冷静に考えたら、やっぱりこのままじゃあかんなって思うし」


そう言った香は、いつになく真剣なまなざしで。


前を向いて進んで行こうという、強い意志を感じた。


綺麗さっぱり切られた爪。


それはそんな気持ちを象徴するようで、何だかカッコ良かった。


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