oneself 前編
その日は家で夕食を取るという香に合わせて、7時半過ぎにはカフェを後にした。


香は最後に、あたしに言った。


「ホストの仕事なんて理解出来んけど、哲平の性格は良く知ってるから。哲平は未来の事裏切るような奴ちゃうやろ!」


すごく嬉しかった。


仕事に対する不安はあるけれど、でも哲平の性格は、あたしも信じてるんだ。


周りに女の人がいるからって、好意を寄せられているからって。


それで壊れるような恋愛なら、とうの昔に終わっていたはず。


高校時代もそうだった。


それでも哲平は、今もあたしの隣にいてくれる。


ただどうしても、自分の目では見れない事、想像するしかない事。


未知の世界なだけに、膨らむ妄想。


それは心の片隅に、拭えない不安としてあるけれど。


香の言葉で、少しだけ安心出来た。


あたしにとって、香は本当にかけがえのない友達だと、改めて感謝した日だった。


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