oneself 前編
翼とあたしは似ていた。


翼は何でも隠さずに打ち明けてくれる子で、あたしもそんな翼には、沢山の事を話した。


高校時代は地味で目立たなかったという翼。


大阪に来るのをきっかけに、かなり頑張って変わったと言っていた。


「こういうの、大学デビューって言うんだよね」


照れながらそう話す翼に、親近感を覚えた。


そしてある日、学校帰りにカフェに寄った時。


翼は少し考え込んだ表情で、あたしに言ってきた。


「今から話す事、引かれちゃうかもだけど…」


「ん、どうしたん?」


あたしの顔を真っ直ぐに見つめる翼。


「あたし、キャバクラで働いてるんだ」


あたしは少しだけびっくりして、でもその後も話し続ける翼に、黙って耳を傾けた。


一人暮らしで生活は苦しいけれど、欲しい物は沢山あって。


両親からの仕送りは、ほとんど洋服や化粧品に消えてしまう。


そんな時、梅田で出会ったスカウトの人に紹介された、キャバクラの仕事。


哲平に、遠藤さん。


そして翼。


この年になれば、そう珍しい事でもないのかも知れないな。


そんな風にも思えた。


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