oneself 前編
翼の話を聞いて、少しは不安が和らいだ。


でも…


無言で考え込むあたしに、翼は業を煮やしたように言った。


「お金は必要なんでしょ?」


そうだ。


あたしが1番考えなきゃいけないのは、お金の事だ。


今から他の仕事をしたところで、間に合わないんだ。


「うん…」


「だったら、やってみたらいいじゃん?向いてないと思ったら、1日で辞めてもいいんだし」


そう、その為の体験入店という制度。


それでもたった1日で、16800円は手に入る。


「もしいけそうなら、必要な分だけ稼いで、さっさと辞めたらいいよ」


必要な分だけ稼いで、さっさと辞める。


普通のバイトでは、考えられないことだ。


あたしは顔を上げ、翼の顔を見つめた。


「やってみる!」


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