oneself 前編
「未来〜、写真撮るで〜!」


思わず感傷に浸っていたあたしは、背中越しに聞こえた自分を呼ぶ声に、はっと我に返った。


慌てて振り返った視線の先には、待ちくたびれ様子の、幸子と香の姿。


「ごめ…」


「遅い!どうせ、ホンマに今日で終わりなんや〜とか、またウルウルしてたんやろ?」


謝りきる前に、ズバリとあたしの心境を言い当てた幸子は、呆れ顔であたしを見つめる。


「いいやんか、卒業式やねんで!幸子も泣いたりとかないん?」


「あたしは滅多な事では泣かへんもん」


涼しい顔で答える幸子は、卒業式の最中も、涙1つ見せなかった。


今日だけじゃない。


体育祭の時だって、文化祭の時だって、クラスの女子達が感動で泣いている中、ケロリとしていた幸子を思い出す。


「最後くらい、幸子の泣いてるとこ、見たかったのに〜」


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