oneself 前編
「あ、てか未来!目の下黒くなってるで!」


あたしの顔を覗き込むようにしながら、香がのんきな声を上げる。


「え、嘘?どこ?」


慌てて鞄をまさぐり、手鏡を取り出した。


手鏡に映っている、見事にマスカラが剥げ落ち、パンダ目になっている自分の顔。


「何これ、やばいやん!写真ちょっと待って!」


もう1度、鞄の中に手を突っ込み、化粧ポーチを探る。


「もう待てませ〜ん。それも記念やん。未来、こっち向いて〜」


ニヤリと笑いながら、カメラを構える幸子。


「うわ〜、無理!無理!」


カシャッ…


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