oneself 前編
必死でマスカラの繊維を手でこすりながらも、条件反射でバッチリとカメラ目線だったあたし。
幸子は腹を抱えて笑っている。
「最悪!ホンマに撮るとか…」
思わずむくれるあたしに、香が相変わらずのんきな声で、自分の目の下を指差しながら言った。
「大丈夫やって。見て、あたしも黒いし!」
香の顔を、覗き込む。
「ホンマや、涙の跡が黒くなってるやん」
「やろ?」
そんな香は、卒業式が始まった早々泣いてたっけ。
そういえば、体育祭の時も、文化祭の時も、香が誰よりも真っ先に、泣き出していたのを思い出す。
幸子は腹を抱えて笑っている。
「最悪!ホンマに撮るとか…」
思わずむくれるあたしに、香が相変わらずのんきな声で、自分の目の下を指差しながら言った。
「大丈夫やって。見て、あたしも黒いし!」
香の顔を、覗き込む。
「ホンマや、涙の跡が黒くなってるやん」
「やろ?」
そんな香は、卒業式が始まった早々泣いてたっけ。
そういえば、体育祭の時も、文化祭の時も、香が誰よりも真っ先に、泣き出していたのを思い出す。