oneself 前編
そしてあたし達は、哲平の家に向かい、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごした。


「どうなん?楽しくやってる?」


「うん!めっちゃ楽しいで!」


あたしは、奈美の事、サークルの事、勉強の事を飽きる事なく話し続けた。


哲平が少し淋しい顔をしている事になんか、全く気付かずに…


「哲平はどうなん?慣れた?」


ひとしきり話しきった後、あたしも哲平に同じように尋ねる。


「うん、まぁぼちぼち…」


「そっか、頑張らんとな!」


「うん…」


哲平。


勝手かもしれないけど、あたしはそんな優しさは、いらなかったよ?


頼りがいなんてないけど、もっとあたしに、全てを見せて欲しかったよ?


でもきっと、言えなくしてしまったのは、あたしだよね…


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