oneself 前編
店内に入ると、香と同じように髪を綺麗に巻いた女の子達が、数人いた。


「あたしもここの服好き~。何か買おうかな~」


幸子も入ってすぐの棚に置いてあるニットに、手を伸ばした。


あたしも何気に目に止まった、首元にラインストーンが散りばめられた、白色のTシャツを手に取った。


1万2千円。


値札を見てあんぐりとするあたし。


あたしの持っているTシャツは、たいていのものは5千円以内のものばっかりだ。


幸子も香も、お店にいる女の子達も、1枚でこんな値段のするものを、躊躇なく買えるんだろうか。


洋服だけでなく、ブランドものの鞄や財布、化粧品やネイルにかけるお金は、一体どこから出てくるのだろう。


早くバイト、探さないと…


ここでも込み上げてくる、自分自身に対する惨めさと焦りを、あたしは唇と一緒に、深く噛み締めた。



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