oneself 前編
「あたしもさ、今の大学に入った頃は、そんな風に思ってたねん」


香は自分も感じていたその頃の気持ちを、ゆっくりと話し出した。


お嬢様学校、世間からそう呼ばれる大学。


入った当初、高校時代のまんまだった香は、今のあたしと同じような気持ちになった事。


初めて行ったランチのお店では、パスタが綺麗に食べれなくて、恥ずかしかった事。


「だってあたしらのお昼って、ファーストフードかたこ焼きかお好み焼きかやん!今でもあたし、そっちの方が好きやしな!」


そう言って笑う香に、あたしは正直に話して良かったと、心の底から思った。


「で、あたしも頑張ったねん」


まずは両親に頼みこんで、ブランドのバッグを買ってもらった事。


「めっちゃ言いにくかったけどな。一生大事にするからって、必死でお願いしたわ」


幸いにも香の両親は、父親は大手企業の重役で、母親は専業主婦だが、エステやフラダンスに通うような、未だにすごく若々しい人だった。


入学祝いと言う事で、何とか買ってもらえたという。


「いくらしたん?」


「10万ちょっと…」


「え~!!!」


「でもな、ホンマは違う形ので、めっちゃ欲しかったやつあってん。でもそれは、20万以上したしさ。さすがに申し訳なくて…」


うちの両親には、とてもじゃないけど期待出来ない。


< 65 / 245 >

この作品をシェア

pagetop