oneself 前編
その時、あたしの鞄の中から、聞き覚えのある陽気な音楽が聞こえてきた。


急いで携帯を取り出すと、そこには奈美の名前が表示されている。


「もしもし」


「未来、今から暇?今日も飲み会あるみたいやけど、未来行けへんかなと思って…」


電話越しで遠慮がちに話す奈美の言いたい事は、十分過ぎるくらい伝わってくる。


それは、一人では行けないから、あたしにも来て欲しいという事。


奈美はお目当ての先輩に会いたいから、行きたいに決まってる。


「う~ん…」


少し考えるあたしに、隣の香が小声で話しかける。


「お誘い?行って来たら?ほら、変わったの見せたいやん。このまま帰るだけとか勿体ないで」


香の言葉が、あたしの気持ちを揺さぶる。


確かに、せっかく化粧や髪の毛が綺麗にセットされているのに、後は家に帰って落とすだけっていうのは勿体ない。


それに、香以外の、周りの反応も見てみたい。


「分かった、行くわ」


「やった!ありがと!」


喜ぶ奈美に時間と場所を聞いて、あたしは電話を切った。


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