oneself 前編
少ししんみりとしてしまったあたしとは裏腹に、写真を撮り終えて満足気な幸子は、辺りをキョロキョロと見渡している。


「あ、哲平、発見!」


哲平


その名前に、胸がドキリと音をたてた。


幸子の目線の先には、女の子達に囲まれている、哲平の姿があった。


でも本当は、幸子が見つけるずっと前から、あたしは知っていたんだ。


「相変わらずモテるな〜、未来も行かんでいいの?」


「さっさとしな、第二ボタン、なくなってるかもよ?」


目に映る光景と、二人の言葉が胸に突き刺さる。


それでも意気地なしなあたしは、一歩を踏み出せないでいた。


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