oneself 前編
中から出てきたあたしに、哲平は大きく目を見開いた。


「かわいい、てかやばい!」


興奮気味にそう言ってくれる哲平。


「よし、それ決まりな!それ着て帰りーや!」


哲平は店員さんを呼び、「着て帰ります!」と、嬉しそうに伝えた。


店員さんはタグをはずして、値札と最初に着ていた服を持って、哲平とレジへと向かう。


「はい!」


手渡された袋には着ていた服が入っていて、あたしは今、哲平からプレゼントされた服を着ている。


「ありがと」


「最初に着てた服も似合ってたけどな。胸が開き過ぎやし、あんまり他の男がいるとこでは着たらあかんで」


そう言ってあたしに背を向けた哲平。


照れてるんだね。


あたしは怒ってたのが嘘のように、哲平に腕に抱きついた。


「哲平!」


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