oneself 前編
「大丈夫やって!ほら、未来も行こっ!」


急にあたしの手を力強く引いた香は、


「幸子もほら!」


と、面倒臭そうな顔の幸子の手も引いて、ぐいぐいと歩き出した。


哲平の周りには、同級生やら、下級生やら、数十人の女の子達の群れが出来ている。


哲平に近付けない…


「哲平!」


そんな中、悪びれもなく、幸子が大声で哲平を呼んだ。


ねぇ、香はあたしの気持ちに気付いて、手を引いて、ここまで連れて来てくれた。


あたしは香のそんな優しさに、何度となく救われたよね。


ねぇ、幸子はどうしようも出来ずにいたあたしに気付いて、哲平を呼んでくれた。


あたしは幸子のそんな強さに、何度となく助けられたよね。


最後の最後まで、二人には迷惑をかけっぱなしだ。


感謝しながら、目頭が熱くなってくる。


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