oneself 前編
充電が切れた事は気がかりだが、どうする事も出来ない。


哲平からだったらどうしよう。


そんな事を考えているあたしに、奈美は思い出したように話し出した。


「てか、ホンマ腹立つねんけど!」


「そうや、何があったんさ?」


「あんな…」


奈美の話によると、奈美が頬をぶたれた相手は沢井先輩といって、奈美の好きな先輩、立川先輩の、彼女の友達だそうだ。


先輩の隣にいた奈美にいきなり話しかけてきて、先週の帰りに何をしていたかと、尋ねてきたらしい。


もちろん奈美は、上手くごまかそうとした。


しかし沢井先輩は、しつこく奈美に詰め寄ったそうだ。


「でもそれって、彼女にバレてるんちゃうん?」


「う〜ん、バレてるかも」


奈美は悪びれる風でもなく、あっけらかんとしている。


「でもさ、いきなり叩く事ないやん!」


あたしは何も言えなかった。


奈美の気持ちが、どれほどのものなのかは分からない。


でも立川先輩には、彼女がいる。


それを分かってて、好きになる事、関係をもつ事。


正直あたしには、理解出来なかったから。


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